酒害体験談

入会しちまったんだから、もう酒は呑まない

発表者 M・S
所属 新宿断酒会

 断酒会に入会して、まだ三年。地元新宿の例会にしか出席していない自分に会報への原稿のお話が まわってくるとは思ってもみませんでした。戸惑ってます。何を書いてよいのやら・・・。
 振り返って考えてみると自分はマンガで断酒会を知りました.吾妻ひでおさんの「失踪日記」。こ の中で氏のアル中体験のことが書いてあるのです。入会した時に会の名簿でその名前を見つけた時は 、あの話は本当だったんだと思いました。あのマンガはとても売れたみたいですね。自分も三冊買っ て、一冊は本棚に、後の二冊は友人にあげちゃいました。読んでいた時はまだまだは他人事で笑い飛 ばしておりました。
 実はその頃、長年勤めていた会社を退社してこと(あまり好い辞め方ではありませんでした)、父 親の介護、他界したことがあり、自身の生活や体調に異変を感じ始めた時期でもありました。うるさ い奴はいなくなった。自分を咎めるやつはもう誰もいない。ずっと働いてきたことだし、ここらで少 しサボッテみよう。荒れた生活の始まりです。昼近くに起きてコーヒー飲みながら新聞。そのうちお 腹が空いてくる。お昼ご飯食べながらビール呑みだす。昼時のサラリーマンで混雑している食堂で、 大きな声で「ビール!」と注文するのは快感でした。その後はラジオや音楽聞きながらネット、昼寝 他。気が付いたらもう夜。当然の如く呑む。こんな生活が半年程続きました。いつの間にかお腹はポ ッコリ。今まで身に着けていた服は着れない。靴下履くにも一苦労。体重は八十キロにもなりました 。周りの人にも自分の変容には驚いた様子でした。「太ったな」と会う人会う人に言われました。
 そして仕事を始めなければならなくなってきました。父親の仕事の清算、引継、事業の立上げです 。一年間の休養(サボリ?)の後の社会復帰です。しかし飲酒生活は変わりませんでした。時間が空 くと呑んでいたような気がします。こんな生活をして、おかしくならない訳がない。何をやっても集 中力が続かないのです。三十分も机に向かっているとイライラ。ジッとしていられない。頭の中に湧 いてくるのは遥か昔の嫌なことばかり。机の前で一人ブツブツ、トイレの中で怒鳴る、叫ぶ。そして 不眠。夜中に飛び起き壁や本棚を殴ったり蹴ったり。大事な物、かなり壊しちゃいました。ケガもし ました。
 そんな時思い出したのが吾妻さんのマンガ。何で思いついたんだろ?今度は真面目に真剣に読みま した。そっくり同じではないけれど共通することはある。依存症に陥る過程。もう原因はアルコール だと確信しました。ネットや本で依存症のことを調べてみました。そこに書いてあることはそのもの ズバリ、自分のこと。考えてみれば酒には碌な印象しかない。
・父親が酒を呑んでは暴れ、手がつけられなかったこと。
・最初は無理矢理呑まされ、まずくて辛かったこと。
・学生の頃、「酒も呑めないのか」と笑われ一人で練習したこと。
・そのうち呑むようになり、会社では好い気になって呑んで暴れたこと。かなりの人に迷惑をかけた 。
 例会を二回見学して入会を決意しました。酒が無い生活なんて・・・悩みましたがエイ!ヤッ!と ばかりに松本会長宅に電話。まるで水の中に飛び込むような感じ。入会しちまったんだからしょうが ない。もう酒は呑まないぞ。今の心境はこれしかありません。例会で体験談を聞いているとまるで自 分の過去のよう。酒癖が悪いのではなく、立派な依存症だったんですね、俺。あの席で改めて依存症 なのだと自覚しました。新宿例会にしか出席してない自分ですが、体験談を教訓にしていきたいと思 います。