アルコール依存症を知る

依存症のタイプ

A.晩酌型

飲みはじめの動機は、嗜好品として嗜む程度であり、体質的にはそれほどアルコールには強くない。二日酔いも、悪酔いもするが比較的症状が軽く、下戸のような苦しい二日酔いはしない。従って、人並みに飲めて二日酔いを積み重ねることが出来る。飲み方そのものは比較的静かで、当初は言動のコントロールが出来るのが一般的である。

長年の飲酒は、アルコール耐性を高め、生活習慣とあいまって、依存性(身体面、精神面)を強め、さらに大量に飲酒する連続飲酒になり易い。即ち、量的コントロールが出来ない状態になる。さらなる進行は、禁断症状を抑えるための朝酒となり酒に囚われ、酒の切れない状況になる。*ブレーキのきかない車に例えられる。

このタイプは、アルコール耐性の強化されるなかで誰でもなる可能性があり、障害のでる時期は様々であるが40〜60才に多くみられる。体質的にはアルコール分解能力は人並みにしかないため、大量飲酒は各種の障害が体に現われる。障害を大別すると脳障害が出現するタイプと、内蔵(主に肝臓)にでるタイプに分けられる。
A-1:内蔵 肝臓、膵臓、胃、高血圧、糖尿病、血行障害、性障害等
A-2:脳障害

 脳萎縮、記憶障害、神経障害
 *離脱時に、手のふるえ・幻聴幻覚・アルコール癲癇・振戦せん妄、が現われる。

 1.2の障害は、アルコールに起因している範囲のものは断酒することにより、大幅な改善もしくは回復する。

B.乱れ酒型

一般に酒が弱く、小量の酒で豹変する。知性理性を失い本能的言動となり、社会的問題を起こすことが多い。いわゆる質的コントロールが出来ないタイプで、本来酒を飲む資格ない。ハンドルの壊れた車に例えられる。

飲みはじめの時期からこの傾向があり、若年から中年で問題が表面化しているが、大量飲酒をしていないため、体の障害は比較的少なく、問題を認めにくい。

タイプとしては、時々乱れ、状況をほぼ覚えているタイプと、同じパターンで乱れ、状況を全く覚えていないタイプがある。

表面に現われる乱れ酒の種類は次のようなものが挙げられる。
B-1:暴力、暴言、からみ。
B-2:ハレンチ行為、経済感覚麻痺→浪費
B-3:ブラックアウト(アル中停電)
B-4:渇酒症

 *社会的問題を起こした後、反省し一時自分で酒を切ることが出来る。入院経験のない断酒人にこのタイプが多い。

C.逃避型

情緒不安定、精神不安定をベースにもち酔いを求めて飲む。発症時期は若年で、女性にも多くみられ、いわゆるAC(アダルトチルドレン)もこの範疇にはいる。このタイプは、アルコール以外にも薬物、ギャンブル、異性等にも依存、逃避する傾向があり、断酒するだけではなく、専門的治療(カウンセリング)を行なわなければ、長期的断酒も成功しがたいケースが多い。

以上タイプとしては、ABCの三種類に分類したが、すべてのアルコール依存症に当てはまるものではなく、中間的なもの、他のタイプの影響を受けているもの等がある。

例えば
(1)Aが加齢と共にA+Bになる場合もある。
(2)CはBと密接な関係があり、ほとんどがC+Bといってよい。
(3)Aで、本人は気がついていないが、Cの影響がある場合も比較的多い。